【活動進化プログラム】公開講座レポート #01

イベント2016年11月24日

#01 VisionMaking 多くの共感を呼び込む、目標のつくり方

自分の街をもっと住みやすくする良いアイデアが思いついた。
それを誰かに話してみたら「いいね!」と言ってもらえた

─京都には、そんなアイデアをもった人や、街のコトについて
話せる場がたくさんあるように思います。
けれど次に直面するのは、そのアイデアの実現にむけて
より多くの共感や行動を呼び起こすこと。

・はじめの一歩のアクションをどう起こしたらいいの?
・小さなアイデアの種から大きなビジョンをどうやって組み立てたらいいの?
・近しいことをやっている仲間とどう出会うの?  …などなど

モヤモヤをいつまでも抱えていないで、先輩の経験談に学ぼう!
という主旨の講座を企画しています。

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「“みんなごと”のまちづくり推進事業」とは
京都がもっと住みやすくなるためのまちづくりの取組提案を
市民グループ等から募りその実現を目指す京都市の企画。

応募されたアイデアは既に200件を超えています。
この取組提案者を対象に、自身のアイデアを次のステップへ
進めていくためのノウハウや力を身につけるための
サポートプログラムが開催されています。

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この活動進化プログラムは「連続講座」と「伴走支援」の二本柱で構成されていて
本日は公開講座の記念すべき第一回。

「Vision Making~多くの共感を呼び込む目標のつくりかた」というテーマのもと
京都移住計画の田村篤史さんと、熱海のNPO法人atamistaの市來広一郎さんが
ゲスト講師となり、存分に経験をシェアして頂きました。

まちづくり活動をスタートさせ、成果を出すために最も必要なことが事業目標とミッションの設定。

より多くの共感を呼び込むため、どんな未来を描くことが大切かというポイントを
まちの未来を描き活動を続けている実践者であるお二人から学んだことをレポートします。
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会場では参加者同士での自己紹介も終了し、熱気むんむん。
さあ、いよいよゲストトークのスタートです!

 

□田村篤史さんのVision Making(京都移住計画)

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田村さんがこの活動をはじめたきっかけは、自分自身の私的な欲求や願いからだったと言います。もともと京都出身で「いつかは京都」と言いながら東京での日々が過ぎていくなかで、次第に「いつかはこないぞ」という思いが強くなっていきます。「いつかのための今できることをしよう」、そうして最初の一歩を踏み出しました。

当初掲げたビジョンは「地元に帰りやすい社会へ」。その実現のためにハードルを下げる活動をはじめます。具体的には、東京から京都へUターンIターンを希望している30代をターゲットに、京都の求人や改修可能な空き家物件などを仲介すること。はじめた時点では世の中でのニーズの有無は仮説でしかなかったと言います。しかし蓋を開けてみれば、移住希望者の発掘と地域の受け皿づくりというこのモデルは、今や京都以外の全国15地域で「○○移住計画」として横展開されるようになりました。

 

田村流のVision Makingの要諦はどこにあるのだろう?

「今振り返ってみて思い浮かぶのは“適切な自己中心性”という言葉」と田村さんは言います。

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ジコチューというとネガティブな意味もあるけど、自分にとって必要なことはきっと他の誰かにとっても必要なこと。
さらに世の中としても求められるものであれば、きっと広まっていくと思います。

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□市來広一郎さんのVision Making(NPO法人atamista)

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東京駅から新幹線でわずか45分、首都圏至近の温泉都市熱海。かつての賑わいは影をひそめ、人口減少、高齢化率、生活保護率、出生率、未婚率、空き家率等の数字が静岡県下ワースト1という衰退の一途。

市來さんはこの熱海の地に生まれ、高校生のころから「熱海をなんとかしたい」と思っていたといいます。東京で10年近く会社員勤めをしていたものの、2007年に熱海へUターン。戻ってきた市來さんが一番ショックを受けたのは、これらセンセーショナルな数字ではなく、「地元の人たちが熱海での暮らしを楽しんでいない」という事実でした。(実に地元人の4割以上が熱海での暮らしについてネガティブイメージを抱いているという)

地元の人が、地元を楽しむ街にしたい。その思いから、まずはじめたのが“地元人対象”の熱海体験ツアーでした。昔の遊郭跡の昭和レトロの建物や、南熱海の農園での農業体験など、地元のおもしろい人やコトを独自に掘り起こしていき、3年間で220種類ものツアーを企画、計5,000人が参加したのだそうです。結果、ツアー参加者の7割が熱海暮らしのイメージがプラスに変化し、もともとの狙いであった熱海の強烈なファンをつくることは奏功します。

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少しずつ街は変化してきたけど、お金にはならない。「このままではだめだ」と、2011年株式会社machimoriを設立。熱海銀座エリアをターゲットに、クリエイティブな30代に選ばれる街をつくろうと、空き店舗を借りて自分たちで改装して「Café RoCA」をオープン。続いてその向かいに、10年間空き店舗だったところをリノベーションし「ゲストハウスMARUYA」をひらいた。朝ヨガやゆる酒会など年間100を超えるユニークなイベントは若者や外国人観光客を惹きつけ、熱海の宿泊者数は2011年を底にV字回復。ブレイクスルーし、街の風景が変わったといいます。

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「めちゃめちゃ高いビジョンを掲げること」と言い切るのが市來流のVision Making。理系のコンサル出身で、データや課題の分析に長けているようで、初めの段階では分析的思考をするわけではないのだという。なぜ自分はそれをやろうとするのか?という自分の個人的な体験や感覚を掘り下げているうちに、「ビジョンは降ってくる」という。起点は個人であること。

「ビジョンをみんなに合わせてしまって一度失敗してるんですよ」

何事もスマートにこなしてきたように見える市來さんからの意外な言葉に会場も聞き入りました。

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□クロストークセッション

ここからは、企画進行の東信史(まちごと総研)も加わってのクロストークへ移ります。
お二人のお話しをうけて、さらに聞きたいこともっと知りたいことを斬り込んでいきます。

 

Q:ビジョンってどの範囲まで伝える/伝わるもの?

どれだけ事業の規模が大きくなっても、自分が直接関われるのは数十人が限界だが
団体としては数百人レベルになるというのはお二人とも同じでした。

市來さんの場合、会社組織だけでも現在30人が所属しており、各論のイベントやプロジェクトは基本的にメンバーが主体となって進めている。なにか問題が生じたときだけ自分が出ていったりするかたちで、ほぼ現場に任せられるようになったのはここ数年のことだといわれます。

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東>ステークホルダーマップがスライドの途中ででてきましたけど、あれは大事?

市來>マップの絵だけじゃなく、表にもして視覚化しているんですよ。このプロジェクトの協力者はだれ?
潜在的な反対者はだれ?資金をだすのはだれ?のレベルまで落とし込んで、障壁をつぶしていくようにしていますね。

東>それはすごい!

市來>いきなり誰かの一声でつぶされて前に進まないという失敗談もあったので。最低限誰をおさえておかないといけないのか。これを整理するだけで心の準備になりますから。

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Q:いつぐらいから連携を考える?誰とどう連携する?

田村>僕の場合、まず自分の余白部分をみせることでしたね。ビジョンを大きくすると当然自分一人ではできないことがでてきますよね。その時、自分が得意なことを示すことで逆に空いているところ・余白をみせるというか。

市來>僕はいきなり初めて知り合った人と会社をつくろうとして失敗した経験がありまして。今は、ある一定期間だけ関わってもらったりするなかで人を見極めながら、ステップを踏みながら、徐々にコアな部分に関わってもらうようにしています。で、自分たちが惚れ込んだコアな少人数のメンバーで意思決定できる仕組みにしています。

 

Q:よく“課題”を知っていますよね。どうやって把握しているんですか?

市來>理系出身だし、分析はやらないと気持ち悪いっていうのもありますけど(笑)。街の根本的な課題・本質的な問題を解決することをやりたいという想いがあって。なぜそういう問題がおこるのか?そもそもいまどういう状況なのか?の本質をはずしてしまうと、やっている活動がなんの解決にもならないと思うんです。

把握の仕方は、例えば空き家の状況については市も知らなったことを、僕らが電気メーターみて止まっているかどうかっていうアナログなやり方で調査したり。データは国勢調査のもので十分ですね。

田村>僕は客観的なデータというより、個人のストーリーから、これは他の人にも起きているだろうと組み立てる文系アプローチ。それでやっていくなかで自然と集まった参加者の属性データから、ニーズはUターンよりもIターンの人にあったと見出していきました。

東>調査の方法は文系法、理系法と異なっているけれど、両方必要なことですね。状況や状態をわかっているから自分が動ける、人を動かせるという事実がわかってきました。

 

Q:では課題が見えてきて、どんなタイミングでビジョンをつくる?さらにその後は?

市來>大きな目標をばんっ!とつくって、最初の一歩だけつくる。順を追って達成していくものではなくて
あとのプロセスはやっていくなかで、いつのまにか思っていたところに行けているという状態が多いです。

東>道なき道というか。

市來>そうそう。一歩すすむと次の視界が見えてくるので。目指す先をどこかに放り投げておくと、道標になります。

市來>ところで、京都移住計画は、5年後・10年後どうなっていくの?

田村>「迷い中」って言っていて(笑)。行きたい場所に自由にいける世の中をつくりたいし、人と場所の循環に関わっていたいというのはある。ただそれを数値目標としておくのは、不得手だし縛られそうであえておいていないんです。

 

Q:(会場からも質問)ビジョンから事業をつくるということと、事業をビジネスにするということは、イコールじゃないという気がするんですが…そのあたりどうお考えですか?

市來>そこをわけて考えているんですね。ビジョンを考えているときと、お金のこと考えているときとは頭の使っている部分が違うんで。どれだけ投資してどれくらいの人が使ってくれていくら位で買ってくれてというシミュレーションをして、イケそうだなと思えるところまで考え抜きますからね。つまり、ビジョンを自分のなかで考えてつくったら、そのあとは徹底的にお客さんのこと、相手のことを考えるということをしています。

 

□グループワークショップ

実践者であるお二方からリアルな英知をシェアしていただき、会場の体温もホットになっところで、学んだことを次に活かすべく、自分たちがビジョンをつくるときにこれを大事にするぞ!という宣言で締めくくります。

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・自分らしさ、自分がワクワクする・おもしろいと感じるポイントが何かを知ること。

・ステークホルダーが増えていっても、ブレないこと。

・頭で考えるだけじゃなく、言葉で発信していくことが大事。
発していくことでシンプルに研ぎ澄まされていくと思うから。

 

本日は全四回の連続講座の初回「Vision Making」編でした。
次回11月25日は「Event Planning つながりをつくり出す、イベントのつくりかた” 」編とし
葉山芸術祭の松澤利親さん、Orinoco Peatixの白勢竜彦さんをお招きする予定です。
広い視点でのまちづくりを考えながら、京都や他地域での活動をリアルに学び
市民の共感や行動を呼び起こす力を身につける公開講座プログラム。

ぜひ次回はあなたもご一緒に!

▶︎活動進化プログラム:公開講座情報はこちら
http://machigoto.org/minnagoto/

グラフィック・レコーディング/タオルマン

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