【2018年度 活動進化プログラム】公開講座レポート #02

レポート2018年10月15日

#02 物語を通じ想いを伝え、共感を力にかえる情報発信とは?

 

9/28(木)、“みんなごと“のまちづくり推進事業活動進化プログラムの第2回公開講座「物語を通じ想いを伝え、共感を力にかえる情報発信とは?」を開催しました。

“みんなごと”のまちづくり推進事業は、京都がもっとよくなる、もっと住みやすくなる提案を、市民から募集し、行政と民間が一体となって実現を目指す協働事業。全5回の公開講座では、まちづくり・お宝バンク に提案をされている方、またはこれから提案しようと考えている市民に向けて、企画、広報、資金調達の手法の講座、実践者とのトークがおこなわれます。
(※みんなでつくる京都 まちづくり・お宝バンク)

 

取組みを進める中で重要になる情報発信。伝えたい価値の見つけ方や共感を得る方法、どんな考え方で発信すればよいのか?といった課題を抱える方も多いのではないでしょうか?

 

ゲストは、フリーのライターであり、一般社団法人防災ガールの事務局長、morning after cutting my hair Inc.取締役でストーリーライティングと企画運営もされている中西 須瑞化さん。多彩な事例を交えながら「物語を通じ想いを伝え、共感を力にかえる情報発信とは?」についてのお話をいただきました。

 

共感性、応援・支持したくなるストーリーが重要になる

morning after cutting my hair Inc. は社会課題の解決のためのコンサルティングとPRの会社。社名には、髪を切った次の日の朝のような、周りからみると大きな変化ではないけれど、自分にとっては大きな一歩を踏み出している、そんなドキドキする気持ちを後押ししたいという想いが込められています。恋に落ちる相手としか仕事をしないことを明言し、WebサイトはPRやコンサルティングの会社としてはめずらしいストーリーを全面に出した作りとなっています。

morning after cutting my hair Inc.(macmh-inc.com)

 

一般社団法人防災ガールは「防災が当たり前の世の中に」というミッションを掲げて、5年前から防災の普及啓発を行っている団体。累計130名以上のボランティアメンバーが関わってきた活動は、一切広告を打たずに多くの共感を得て、これまでに省庁や大企業とのプロジェクトも実施してきました。

一般社団法人防災ガール(http://info.bosai-girl.com/)

 

情報を得る場所がテレビからネットへ変化し、流通する情報量も増える中、これまでの一方的な情報発信から双方向のコミュニケーションの設計をすること。たくさんの情報の中から見つけてもらい、選んでもらうには共感性、応援・支持したくなるストーリーが肝になると言います。講座ではTwitterやWebサイトでの発信の事例を挙げながら話して下さいました。

 

事例①

防災ガールのTwitterで災害時に実際に発信したツイート。災害時は不安な人に寄り添う姿勢で安心感を持ってもらうこと。また、嘘のない情報発信と丁寧/継続的な情報発信で、欲しい時に欲しい情報があることが信頼につながるとのことでした。

 

 

事例②

二つ目は無添加のミートボールなどを販売される石井食品さんの非常食の開発事例。味と品質にこだわる石井食品さんの想いをストーリーにして、普段から食べられるし、体にも優しい、けれど非常食にもなるお粥「potayu」を、忙しく「回復」が必要な女性というターゲットに向けて発信されました。

potayu(https://campaign.ishiifood.co.jp/potayu2018)

 

この他に、国際的にも評価される津波防災のプロジェクト#beORANGEなど、イベントを作っていく過程で人をまきこみ、メディアに取り上げてもらえるように設計したムーブメント型プロジェクトの事例をお話しくださいました。

#beORANGE (http://beorange.jp/)

 

心打つ物語は「過去」にあり、心慄わす希望は「未来」にある。

質問の多かったストーリーの探し方について中西さんは、とにかく問い続けることだと言います。「どうしてそれを始めるのか?今のやり方になったのはなぜか?大切にしているのは何か?なんで大切にしてるのか?どんな未来を作りたいのか?それはなぜか?誰と作りたいのか?」ひたすら問い続けることでコアの部分が見つかり、一度見つかれば終わりではなく常にやり続けることが大事だと言います。

 

そうして見つけた物語を届けるために、その発信が

「面白い!感動した。これが欲しかった!ためになった/そうだったんだ。誰かに伝えたい。」と感じてもらえるか?

参加する余白があるか?

ターゲットの日常に近くなっているか?

想像しやすくさせる設計になっているか?

などを考えてみるとよいそうで、誰に何を届けるかが決まると手法が決まる。その手法に独自のストーリーを掛け合わせることで共感が生まれる。共感にその人の体験が加わると、自分ごとになってファンになる。とまとめを話して下さいました。

 

質疑応答の時間、失敗した経験やSNSでは届かない人にどうアプローチするのかといった質問に対しては、「防災」という領域での幅広い年齢層とのやりとりの難しさの経験談などをまじえ、団体の中にいる人が自分たちの活動をどれだけしっかり話せるかが大事といったお話をされていました。SNSで届かない人たちへは、たとえばその地域の人が集まる場所にポスターを貼ったり、地域で発信力のある人とつながって発信したり、オンライン以外の施策でも「誰に・何を」届けたいのかを考えて設計するのがよいといったこともお話されていました。

 

後半はお宝バンクに登録されている外国人女性の会パルヨンの黒田さんとニーナさんから活動や想いを聞きながら、抱える課題を会場の全員で考えていきました。

パルヨンはフィンランド語で「たくさん」という意味。日本人と外国人の共同で2007年に設立されました。具体的な活動としては、外国人と日本人が同じテーブルを囲んでおこなうピアサポート、個々の相談に向けたピアカウンセリング、外国人に向けた講座やガイドブックの作成をされています。昨年度からは日本人向けに外国人とのコミュニケーション方法を記載した冊子を作成、この冊子を使ったワークショップも考えられているそうです。

在日歴の長いニーナさんが感じられた日本の制度や独特の風習、ご近所づきあいの難しさ。そういった日本に長くいる外国人に向けた情報が不足していると感じられたことが活動を始められるきっかけとなり、現在では、日本での生活にうまく馴染めない時に安心して逃げ込める場としてピアサポートもされています。今後は外国人向けのアプローチだけではなく、地域社会を担っている高齢者の方にも届けたいという思いを持っているが、難しいと感じることも多いと話されました。

会場ではグループとなり、パルヨンさんが抱える課題をみんなで考える時間となりました。

 

参加者からは、「普段の日本人でも同じことに悩んでる。学校にフライヤーなどを送って、子どもを巻き込み、親世代、おじいちゃん世代に知ってもらうことがいいのではないか?」「キャラクターを作る。四コマ漫画を作る。」「共感する話が実体験としてあるので、周りから見た時にこの団体がどんな社会を作りたいのかというビジョンを見せてあげるとより良くなるのではないか。」といった意見が出されました。

中西さんからは、この団体だからこそ好きになれるコアは何なのかを整理するとシンプルな応援者が増える。専門家など、横の仲間を増やし、自分達はどの立場で何をしたいのかを整理する。10年間続けていることや、外国人女性と日本人女性が集まって発足したというストーリー、団体の中にいる人を発信し、やさしい雰囲気を伝えてもよいのでは?といったアイデアが出ました。

 

【参加者の感想】

・問い続ける大切さとそれを外に出してブラシュアップする時間の重要度を改めて感じました。

・常日頃業務をこなしているだけの日々だなぁと思うので、考える時間をもっととれるように意識していきます。

・自分でももっと考える時間を作りたい。メンバーと共有して、アウトプットする前の「しこみ」に時間をつくりたい

・完璧を求めようとし過ぎていたなと思った。自分ごと化は参加する余白というのは「ハッとした」

・やはりマーケティングの基本にのこって自分達のコアとターゲットを明確にする必要があるのだな

 

【グラフィックレコーディング】

今回は稲垣奈美さんに中西さんのトークを分かりやすくレコーディングして頂きました!

 

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