【Report】ライフデザイントーク&座談会「あなたは、30代でどんな暮らしやシゴトをつくる?」/佐賀県江北町

イベント2017年03月28日

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会場の様子

 

2017年3月17日、福岡市内のHAPPY HILLにてライフデザイントーク&座談会が企画された。
テーマは「あなたは、30代でどんな暮らしやシゴトをつくる?」。
告知開始すぐに申し込みが続き、平日夜19時という早い時間にもかかわらず
開始時間前にはほぼ満席となった。

 

企画・進行はまちとしごと総合研究所 / 佐賀移住計画の東信史さん。
ゲストが9名というボリュームのあるコンテンツではあったが
ファシリテーター東さんの進行で参加者が“聞くだけ”にならないよう
対話の時間が設けられるなど、活発な会となった。

 

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イベントの趣旨を話す東さん。

江北町まちづくり座談会が紡いだ、人々の繋がりと役目

まずは江北町役場の坂元弘睦さんによる、江北町まちづくり座談会のお話。
佐賀県江北町ではなんと4年前から月に一度定期的に座談会を開催しているのだそう。

 

佐賀県江北町での取り組みについて話す坂元さん。

 

坂元さんはこう話す。
「”まちづくり”というと同じ町の人が来ることが多いかと思うのですが
ここは町外からも参加してくれるんですよ。参加者のうち半数は町外の方です。
オープンであることが大切だと感じています。」

 

町外の武雄市から参加するナガオユキヒラさん(ユキヒラ・モノデザイン)は
空き家を改修しながら暮らすデザイナーで、定期的に座談会に参加するメンバーでもある。
車を借りて家を探す旅に出たところ、たまたま今の場所を見つけたのだそう。

 

「計画通りじゃなくても、流れに乗ったらうまくいったんです。今もピンと来た!
という感覚やいい出会いに導かれてここまで来れたと感じています。」

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参加者の質問にも積極的に回答するナガオユキヒラさん

 

また、江北町地域おこし協力隊を今春卒業するという村元奈津さんは
「大病をきっかけに九州へ戻りました」と話す。
もともと東京でwebディレクターをされていた村元さんは九州出身。
協力隊の制度を見つけてこの町を訪ねたところ、座談会をきっかけに
仲間ができたことで安心して移住ができたと言う。

 

さらに、江北町役場の坂元さんが
地域のキーパーソンたちと繋げてくれたことも決め手になったのだとか。
「座談会、地域と人をつなぐ人物がいること、それがとても大切だと思います。」と村元さん。

 

その他にも、魅力的な空き家との出会いを機に江北町へ移住した家具工房bookMt.の本山広真さん
8年前にノルウェーから来たClub-Rioスティネさんなど
江北町の座談会には多種多様な人々が参加している。

スティネさんは「江北町へ来てやっと自分が落ち着ける場所が見つかった」と笑う。

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自身の活動について紹介する西塔さん

ゲストたちが語る、生き様や暮らし方、ターニングポイントなど

 

まずは西塔企画/元福岡県上毛町地域おこし協力隊の西塔大海さん。
今でこそ活発に活動する彼だが、過去には不登校、ニート
フリーター、バックパッカーなどを経験。

紆余曲折を経てカリフォルニア大学で物理学を学んだが、3.11をきっかけに気仙沼へ。
震災一週間後に現場へ入り、10日後には復興支援の会社を立ち上げ
そこで初めて「地域」と関わることとなった。

そこから2013年春福岡県の上毛町へ移住。
移住政策「みらいのシカケ」をはじめとし
古民家をDIYでリノベーションする教育プログラム「上毛デザインビルド」
田舎暮らし研究サロン「ミラノシカ」などを行う。移住交流を通じて
10組以上の移住者が生まれたという。

 

株式会社DMX / 福岡R不動産の坂田賢治さんは
不動産会社のフリーエージェントという存在だが
不動産仲介というよりは「トライアルステイ」や「空き家バンクの運営」などの
移住の仕組み作りを行政と行う仕事がメインだという。

トライアルステイは、移住希望者に実際に移住した後の暮らしをイメージしてもらうための
いわゆる「お試し移住」の取り組みのこと。
移住検討者がどういったことを考えているのかというモニタリングの意味もあったのだそう。
西塔さんとは、上毛町のトライアルステイで一緒に仕事をしている。

筑後からスタートしたトライアルステイは、24人定員のところへ100組以上の応募があり
そのうち数組が実際に移住するなど大きな反響があった。
震災の影響もあったのではないかと、坂田さんは話す。

現在は那珂川町で中山間地エリアの賃貸物件を開拓するプロジェクトが進行中だ。

 

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トライアルステイの説明をする坂田さん。

 

「”人口を増やす”というよりは”地域の担い手を増やす”のが大切なのではないかと思います」
という坂田さん。
”住む人”を増やすよりも、”地域のことを自分ごととして取り組む人たち“が
どれだけいるかが、地域にとって重要なのだと語る。

 

続いて佐賀からは、佐賀県有田町地域おこし協力隊の佐々木元康さん
佐賀県大町町地域おこし協力隊の橋本優さんが登壇。

 

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有田町での取り組みを紹介する佐々木さん。

佐々木さんは2015年より20年ぶりに佐賀県有田町にUターン
「アリタカラ」という移住のポータルウェブサイトを運営している。

空き家紹介や移住体験ツアー、 “中山陶和堂リノベーションプロジェクト“という
シェアハウス&シェアアトリエ作りなども企画。

空き家を片付けた際に出てきた有田焼を、企画した”蚤の市”で販売し
運営資金に充てるなど、有田町ならではの取り組みをいくつも生み出している。

 

また、2016年より奥様のご実家である佐賀県大町町へIターンした橋本さんは
もともとオフィス家具メーカーの海外事業部出身。
大町町では炭鉱の町である特性を活かし、長屋のリノベーションプロジェクトをスタート。
マルシェの開催や空き家BARなど、地域の人をつなぐ場作りを進めている。

 

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会場からの質問に受け答えするゲストたち。

会場からあがった、参加者たちからの質問

ゲストの話が終わると、休憩を挟み会場からの質問の時間へ。

 

Q.地域とのつながりを、どうやって作りましたか。

西塔さん:我が家の場合は、看板犬や生まれてきた子どもが
地域と私たちをつなぐきっかけを作ってくれましたね。
ライフステージに合わせて、人との交流が生まれるのだと思います。

 

坂田さん:キーマンを見つけ、その人としっかり関係性を作ることですね。
それから飲み会に参加すること、一緒にタバコを吸うなんていうのもいいですね。

 

坂元さん:行政にキーマンがいると心強いですよね。

 

Q.まちづくりのゴールって、どこだと思いますか。

西塔さん:地元愛を育んでいくことでしょうか。
以前上毛町のトークイベントを東京で開催した際
イベント後に上毛町出身という参加者の方から声をかけてもらったことがあって。
「これからは自信を持って上毛町出身です、と言えます!」と
言ってもらえたのは嬉しかったですね。

個人的なゴールとしては、自分の娘が子育てをしたいなと思ったときに
この里山の暮らしを選択肢として残しておいてあげたい、ということでしょうか。

 

坂田さん:トライアルステイもそうですけど、最初のサポートはしつつも
その後に地域の人たちでどうやってプロジェクトを”自走”させていくか
なのかなと思いますね。

 

ナガオさん:「町おこし」というよりもその場所の人との繋がりが大切だと思います。
私は移住者でよそ者なので、正直地域の人のことや文化がわからないときもあります。
仕事もそうだけど、出会った人に答えるというイメージなんですよね。
漠然と「地域のため」というよりは、「たまたま僕と出会った人の役に立ちたい」
という気持ちが強いですね。

 

本山さん:私も空き家ありきで移住を決めたので、ナガオさんのおっしゃることが
よく分かります。「誰かのため」でなく「自分のため」でないと
続けられないこともありますよね。どの場所がいいか、というよりは
みんなが自分の好きな場所に住むのがいいことなんじゃないかなと思います。

 

西塔さん:そういう意味では”地域のために頑張らなきゃいけない”と
悩んでしまう「地域おこしの病」にかかっている人が多いんじゃないかなとも思いますね。

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Q.今の時代、情報が多く選択肢が沢山あって迷いを感じることがあります。
自分に合ったものとどうやって出会ったらいいのでしょう。

 

ナガオさん:スマホを捨てたらいいんじゃないですか。笑
そこで、迷っていること自体が大切。やってみることに価値がありますよね。
解決できないことや諦めることもあったりして。それが20代だと思いますよ。

 

東さん:自分の好きそうなことから、始めていけばいいのだと思います。
面白そうだから始めたことが、仕事になることもありますし。
それから、僕の友達が「会社はパトロンです」という人がいて。
自分のしたいことをして、会社がお金と時間をくれる
そう考えると働くのが楽しくなります。
会社をパートナーと思うか自分が雇われていると考えるかで
働き方や仕事への意識はだいぶ変わるんじゃないかなと思います。

 

西塔さん:僕は会社員をしたことがないので、正直羨ましいなとも思いますね。笑
僕の場合は高校時代ひきこもりで、3−4年動けない時代もあったので
「迷っている」のと「もがいている」ことは違う、と思います。
頭の中だけでもやもやするよりも、分からないけれどとにかく行動することが
大切なんじゃないでしょうか。その先で得られるものがあるのだと思います。

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トーク後に参加者と交流するゲストたち。

 

「あなたは、30代でどんな暮らしやシゴトをつくる?」というテーマのもと
これからの行き方に悩む20代、そしてまさにその世代を生きる30代が集まったこのイベント。

 

これからの暮らし方や働き方の「答えが出た!」というよりは
「今こうして活躍する人たちでも現在進行形で悩むことがあり、悩みながら進んでいる」
というメッセージが語られたような気がした。
等身大で語るゲストたちの姿を見て、勇気をもらった参加者も多かったのではないだろうか。

 

東さんはトーク終了後、参加者へ声をかけていた。
「半年後に、もう一度ここに集まりましょう」。

 

この場で想いを共有した参加者たち、そしてゲストたちも
これからどういう一歩を踏み出していくのかが楽しみだ。

 

※同事業は、佐賀県杵島郡江北町のまちづくり座談会主催事業です。

(Photo&Writing by Chiharu Hatakeyama)

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