【2018年度 活動進化プログラム】公開講座レポート #04

レポート2018年12月18日

#04 SDGs×食:フードロスを減らすために私たちができること

11/28(水)、“みんなごと“のまちづくり推進事業活動進化プログラムの第4回公開講座を開催しました。

“みんなごと”のまちづくり推進事業は、京都がもっとよくなる、もっと住みやすくなる提案を、市民から募集し、行政と民間が一体となって実現を目指す協働事業。全5回の公開講座では、まちづくり・お宝バンク に提案をされている方、またはこれから提案しようと考えている市民に向けて、企画、広報、資金調達の手法の講座と実践者のトークがおこなわれます。

(※みんなでつくる京都 まちづくり・お宝バンク)

 

第4回目となる今回のテーマは「フードロスを減らすために私たちができること」です。会場には「フードロスを減らすには?福祉の分野で取り組めることは?具体的な廃棄食材の使い道は?」といった事に関心のある方々が集まりました。
自己紹介タイムの後は、今回のゲストである西喜商店の近藤さん、おいでやす食堂の河本さん、龍谷大学のかんきょうとさんの3団体から、それぞれの取組みが発表されました。

 

西喜商店 近藤 貴馬さん

近藤さんは90年続く八百屋「西喜商店」の4代目。西喜商店は京都中央卸売市場の場外売店に位置し、市場で余った野菜が回ってくることも多いといいます。

「市場で落札されても、何らかの理由でスーパーに行かなかったり、宙に浮いている野菜は捨てられる場合も多く、どうしようかと考えたのがフードロスに取り組もうとしたきっかけ」だと話します。

 

店頭での値引きや飲食店向けにline@で販売すると共に、同志社大学の学生が取り組む子ども食堂やおいでやす食堂との連携も進められてきました。廃棄野菜を減らしたいという思いを持って精力的に取組む中では、課題も見えてきたと言います。
「一つは、料理内容と廃棄食材がかみ合わないこと。子どもはハンバーグかカレーが好きで、子ども食堂のメニューもそういったものが多いが、ジャガイモやニンジンは痛まないので、廃棄になりにくい。逆に廃棄になりやすい葉物野菜を子どもはあまりたべない。」
「余った野菜がぱっと出てきた時に、その場でさっと料理するスキルがあるか?というと、あたりまえだけどない。廃棄がでる日と子どもの食堂の日が合わないことも多く、その辺の相性も重要。」

 

調理する日と食材が余る日、出される料理と余る食材の相性や、余った野菜をその場で美味しく料理できるスキルなど、フードロス対策とビジネスの相性の悪さを実感されているようです。

 

そういった悩みを持ちつつ開催した「さらえるキッチン」は、みんなで楽しく廃棄寸前の野菜を食べようというイベント。同じく廃棄食材に課題を抱える佃煮屋の津乃吉さんらと共にこれまでに2回開催されました。

 

当日は、言われなければ廃棄寸前の野菜とは思えない料理に参加者の満足度も非常に高く、二回とも大好評のイベントとなったことを映像を交えながら話して下さいました。フードロス対策とビジネスの相性の悪さを実感されている近藤さんですが、家族経営の小さな八百屋でもできることをこれからもやっていきたいとのことです。

さらえるキッチン当日の様子はこちら
(https://vimeo.com/254168216)

 

おいでやす食堂(みんなの居場所制作委員会) 河本歩美さん

おいでやす食堂の河本歩美さんは、高齢者福祉施設西院にて所長をされており、施設で月1回第三週の金曜日においでやす食堂を開かれています。

 

運営体制は、スタッフ7人と地域の方や大学生と先生がボランティアとして関わっています。カレーをメインとしつつも副菜など美味しい料理も好評で、平均100名、多い時には150名もの方が来られるそうです。年齢層も幅広く、乳幼児連れの親御さんや地域のお年寄り、小学生が多く参加されています。

 

「施設を利用する高齢者の方が、認知症や要介護の状態になってもまだまだできることがある。活躍できるということをもっと色んな人に知ってほしい。子ども食堂の場をそういった場にしたいと始めた。」

活動のきっかけをそう話す河本さん。間口を広げ、多世代でワイワイできる場づくりを目指されています。

「シニア大学の方が子どもに昔遊びを教えたり、手芸得意な人ががま口づくりなど、親御さんと高齢者の方の交わりの場としてワークショップ形式で開催するなどしてきた。そういったワークショップに参加しなくても、ただそこにいて顔見知りになるだけでも多世代でのつながりは生まれているのではないかと思う。」

余った食材が人を繋ぐ?

近藤さんと出会い、始めてフードロスの切り口から活動を見るようになったと言います。

「予約制にしていないので量の見込みが立たない。食材が余ることもあるが、うちの施設ではコミュニティカフェをやっているので、そっちに回したり、翌日の職員さんのお昼ご飯にしたりして、なるべくロスを出さないようにしている。」
「食べ物が目の前にあると楽しくなってほっこりする。人と人が繋がるツールになる。おいでやす食堂を始めて今まで出会わない人達と出会う機会になっていて、それがこの取組みをしていて面白いことだと思う。」

龍谷大学政策学部 かんきょうと

龍谷大学政策学部の学生8名で、京都市を拠点にまだ食べられるのに捨てられる食品ロスを救う「京ゼロマーケット」を2カ月に1回のペースで開催、京都市で今日からできることを発信・啓発活動をおこなっています。

 

長岡京市にあるごみリサイクル工場に送られてきた大量の食品。まだ食べられそうな野菜や手が付けられていないお弁当などを見て心の底から「もったいない!!」と感じた事から取組みが始まったと言います。

 

京ゼロマーケットは、捨てられてしまう賞味期限前の食材を回収、無料で提供して啓発する「もったいないスーパー」。配って終わりではなく、来てくださった方と食品ロスについて話し合える場「エコカフェ」。リサイクルかるたや水切りゲームといった体験など、交流や体験を通して食材ロスの啓発を行っています。。

「これまで4回の開催で、集まった食品は600種類、総量107キログラム、20万キロカロリーに及び、これは成人男性の100日分又は100人分にもなる。私たちは京都市伏見区の深草地域で集めており、それでもこれだけの規模の食品ロスを集めることが出来たので、もっと大きい地域になると、もっと大きな効果が得られるのではないかと考えています。」

 

今後の活動について

「今後の活動は住民だけでなく、企業の方向け、も考えているが、金額の問題や責任者問題などがおこるので、対応策を考えながら、次のアクションに繋げるためのデータや要素を集めていく。」
「今回の取組みは新聞だと3社に取り上げてもらったり、テレビの取材が来たりと話題づくりは出来たが、運営面で大学生でしか実現できない企画の意味、継続できる活動にしていくにはどうすれば良いか考えていきたい」

 

3団体からの発表後は、進行の東と参加者から質問を投げかけつつセッションタイムがおこなわれました。

 

「食」は色んな人が関わりやすい。どんな風に人が集まってきたか?

近藤さん:「さらえるキッチン」の参加者はFbで告知しただけですぐに集まった。社会貢献したい欲求がある中で、フードロスは比較的取組み易い身近なテーマであると思う。シェフは友達でまずは安心して頼める人にお願いした。イベントなどがシェアされて、飲食店さんからお声もかけて頂けるようになっている。

 

河本さん:「来るもの拒まず。」です。間口を広め協力したいという方は断らない。大学生は先生とのつながりで来てもらっていた。市民新聞やリビング京都にのせてもらった事が大きかった。回数を重ねて、来ている人にどこで知りましたか?と聞いたところ、ほとんどが口コミだった。

 

かんきょうとさん:基本的には地域の方がポスティングや新聞を見てきてくれる方が多かった。お子さま連れからお年寄りまで、本当に幅広い人が来てくださった。

 

 

活動の頻度や大変さは?

河本さん:月1回はわかりやすいからいいのですが、運営側は忙しい。月1回すぐにやってくる。振り返りも出来ず2週年になってしまったような感じ。

 

かんきょうと:大学での授業もあるので頻繁には出来ない。回収期間も含めて、2カ月に一回が限界。現在は8人のメンバーがいるが、来年は4人になり負担も増える。一方で、地域から協賛の声も頂いていており、そういったつながりの中で広げていっても良いのかなと思うようになった。

 

近藤さん:ニーズはめちゃくちゃありつつも、ロスのものを活かす時にどんな価値を付けていくかが難しい。お金になりずらい活動なので、どうお金に変えていくかがフードロス全体の問題だと思う。

 

お金以外で得られるもの。変わったこと

近藤さん:フードロスについて聞いてもらえることがすごく増え、小さい活動でも注目されるようになったこと。社会的な活動をすることで、いい人だと思われることも八百屋としては良い事。

 

かんきょうとさん:地域の人から応援してくれる人が多い。エコカフェではそれぞれの家庭の知恵も話したりする。そういったつながりが生まれた。アルバイト先の食べ残しを見て、もったいないなと思うようになったり、みんなでご飯を食べる時も食ロスという言葉が飛び交うようになっている。

 

河本さん:食ってすごいと感じる機会が良くある。「美味しいもんあるし行こう」みたいに誘いやすいし、入っていきやすい。同じ釜の飯を食った仲間ではないですけれど職場の輪が出来ている時もある。

 

最後に今後の取組みについて

近藤さん:さらえるキッチンは共感を呼ぶ活動だとわかったので続けていきたい。次は色んな飲食店とコラボして、まだフードロスという言葉が届いていない人にも届けていきたい。あと、単純にLINE@の登録者を増やすことと、みんなに「見切り品を積極的に買いましょう!」というのを伝えていきたい。

 

河本さん:継続することが一番だと思っていて、居場所は居場所なので、一度作ったら継続しないと意味がない。運営もボランティアさんが不可欠なので、しっかりとした体制づくりが必要なのかなと思っている。門戸の広い活動なので、今回のフードロスの切り口の方もいらっしゃるように、色んな人にこの活動を活用してもらえたらと思っている。そして、高齢者の人が活躍できる場所を作りたい。今でも前日に施設の利用者の方が下準備をしてくれていて、料理というのは高齢者の方にとって身についているスキルなので、それを活かした活躍の場にしていきたいと思う。

 

休憩を挟んで後半は、参加者が現在やっている取組みや、こんなことやってみたくなったことをA4の紙に書いて、3,4人でグループになって話し合いました。

各グループからは、染物を使ったワークショップやフードロスとお片付けで掛け合わせたイベント、ロスする食材を使って外国人と鍋をするといったアイデアから、どうやったら普及するのか?自分ごととして取り組めるか?を考え、小学生を巻き込み、親御さんにも来てもらったり、幅広い層が利用するスーパーでの広報活動をする。さらえるキッチンとおいでやす食堂に大学生が関わることで、大学生から広げていくことはできるといった意見が共有されました。

 

フードロスをテーマにした今回は、食の持つ力を感じながら、食品ロスの起こっている様々な場面と、それぞれの場面で課題に向き合う数多くの仲間とのつながりが生まれたイベントになったようです。次回は、12/19(水)開催「SDGs×観光:京都の持続可能な観光のために私たちができること」をテーマに開催します!

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