【活動進化プログラム】成果報告会レポート

レポート2018年03月03日

#みんなごと”のまちづくり推進事業  活動進化プログラム「成果報告会」

 

2月10日、”みんなごと”のまちづくり推進事業活動進化プログラム伴走型支援プロジェクトに
参加した4団体の活動に関する報告会を開催しました。

“みんなごと”のまちづくり推進事業は、
京都がもっとよくなる、もっと住みやすくなる提案を、
市民から募集し、行政と民間が一体となって実現を目指す協働事業。

伴走型支援プロジェクトとして、“みんなごと”のまちづくり推進事業「まちづくり・お宝バンク」に
登録された4団体の提案の実現に向けて2017年8月より伴走支援を実施してきました。
(※みんなでつくる京都 まちづくり・お宝バンク)

 

京都市まちづくりアドバイザーの深川光耀さんをコメンテーターとしてお迎えし、
4団体の発表と参加者を交えたブラッシュアップタイムがおこなわれました。

 

●京都府更生保護女性連盟の北川さん
お宝バンクNo.210:若い女性や少女の援助・いばしょづくり

全国に5500人の会員がいる更生保護女性連盟。京都地区である京都府更生保護女性連盟では、
これまでにも、社会の支えがあれば、人は立ち直ることが出来るという考えのもと、
シンポジウムやワークなど、普及啓発の活動をされてきました。

 

2年前に瀬戸内寂聴さんらが提唱した「若草プロジェクト」のキックオフイベントに参加し、
しんどさや生きづらさを抱える若者には、家にも地域にも学校にも居場所がないこと、
見えない深刻な孤立に陥り、それが高い再犯率や貧困の連鎖につながっていること、
特に女性の場合は家庭の貧困や孤立がJKビジネス等に結びつきやすい状況にあるということを知り、
若草プロジェクトin KYOTOを立ち上げられ、今回の伴走型支援プログラムにも参加されました。

 

人々を巻き込むには?

1月23日に開催された、「公開シンポジウム 回復のとびら」では、
生きづらさを抱える少女たちが回復するときにはどんなことが必要かについて
講義と事例報告がなされました。同シンポジウムは振り返りの会として、
「若草ゼミ」もおこなわれ、シンポジウムの場だけで終わらない、関心のある多くの支援者とつながる場になりました。

その時のつながりから生まれた「わかもの避難基地プロジェクト」は、
しんどさを抱える若者が来られる場所はどんな場所か?について考える人のための居場所
として立ち上げられ、2月6日に第1回目が開催されました。

取り組みを進める中では様々なプロジェクトも生まれました。
一つ目が「パートナープロジェクト」、若草プロジェクトという名称をみんなに使ってもらい、
企業、行政、関係団体にも仲間になってもらうプロジェクトです。
二つ目が居場所を作りたい人をプロモーションなどで応援する「チャレンジプロジェクト」。
この他にも、大学のゼミとの連携など様々な層の人を巻き込む仕組みづくりに挑戦されていきます。

 

「おばちゃん3.0」横から目線で寄り添っていく。

更生保護女性連盟は5500人の熱い思いを持つ会員がいる大きな組織。
これまでの更生保護の活動に加え、パートナープロジェクト、
チャレンジプロジェクトを陰で支える役割を担われます。
また、「信頼できる大人になるプロジェクト」として、会員向けに600回以上のミニ集会を開催、
横から目線の寄り添いの目を持って生きづらさを抱える少女たちに
そっと寄り添う活動になるように取り組んでいかれます。

「人はやさしさの中でしか、回復できない」発表の中で瀬戸内寂聴さんの言葉を使い、
たっぷりの愛情を受けた人間は独り立ちできる。心のしんどさをふっとおろせる居場所を増やし、
自分たちの足で生きていきたいという人が生きていける社会を目指して活動していくと話されました。

 

伴走者として関わられた、山科醍醐こどものひろばの村井さんは取組みついて、

組織の中でやれることと外でやれることを上手く使い分けるぐらい柔軟でないと、
少女たちの課題を見つけ出す目は増やせないと思う。
気軽にかかわれる人と5500人という会員数を持つ伝統的な組織としての強みを
セットにしていくことがこれからの活動の作り方だと思うと話されました。

 

◆深川さんからのコメント

生きづらさは人それぞれだからこそ、シェアしていく必要があることだと思う。
自らの役割をコーディネートやコンサルタントというところに置かれたことや、
ネットワークを外に広げられ、場づくりをやってみたという行動のところが素晴らしい。
地域とつながると仕組化される、継続されるので、
地域団体と一緒になっていくと一つの強みになるのではないかと思う。

 

●スマイルプラス烏丸御池の柳澤さん
お宝バンクNo.231:烏丸御池でオープンCAFE始めました♪語り合いでリフレッシュ

柳澤さんは就労移行支援事業スマイルプラスでハンデのある方の就労サポートの仕事をされており、
事業の一つとして障害のある方の居場所づくりに取り組まれています。

「チャレンジド・ギフティッド」という言葉をご存知ですか?

発表の冒頭では柳澤さんが参加者に問いかけをしました。
チャレンジドは「障がいを持つ人」を表す新しい言葉で、
障がいを持つゆえに体験する様々な事象を自分自身のため、あるいは社会のため
ポジティブに生かして行こうという想いを込められています。
ギフティッドは同世代の子どもと比べても並はずれた成果を出せるほどの
突出した才能を持つ子どもという意味があります。

 

柳澤さんは就労サポートの仕事をする中で、就学と就労がつながっていないことを感じ、
ハンデのある人ならではの強みに視点を当てた就労へつなぐ機会としてパソコン講座や、
地域の方や企業の方が障がいの有無に関係なく参加できる場として
オープンカフェを開催されてきました。
オープンカフェはこれまでに10回で250名が参加され事業への波及効果も出てきたそうです。

 

オープンカフェversion2.0「チャレンジ研究会で目指す13の習慣」

今後はこれまで取り組んできたオープンカフェを進化させ、
学校、会社の中にカフェを設け、チャレンジド・ギフティッドの方の強みを
知れる、発揮できる機会づくりに取組まれていきます。

チャレンジド・ギフティッドは高い能力を持っている一方で、
周りがその人の特性を知り、適切に対応しなければ、
能力を発揮する機会がなかなか生まれないと言います。

柳澤さんは東山総合支援学校内のカフェのデータ収集と集計作業をしたところ、
大学生よりも早く入力が出来たことや、それを見た学校の先生が一番驚いていたことなどを
例に出しながら、機会の必要性を説明されました。

報告会ではスマイルプラスと去年8月から約半年間「スマイル塾」で学んできた
チャレンジド・ギフティッドの子どもたち3名も柳澤さんと一緒に発表されました。

「周りの環境があれば、障がいは強みになる」
5年後10年後には障がい者という言葉ではなくチャレンジド、ギフティッドと呼ばれるようになり、
未来に希望が持てる優しい社会になればと話されました。

 

◆深川さんのコメント

以前にもお話したことがあったが、実際の活動やどういう場が作られているのかがよくわかった。
機会を提供していくために様々な企業とコラボしていくことは大切なこと。
柳澤さんがこういう取組みをしようと思ったきっかけが知りたい。

深川さんからの質問に対して柳澤さんは、
スマイルプラス烏丸御池は2016年の9月に立ち上がったが、最初の半年でお客さん0だった。
事業での取組みを見直す中で、チャレンジド・ギフティッドの能力の高さや能力を発揮する機会が
失われていることに着目し、企業さんにも来ていただく中で、
新たなつながりを生みだす場にしていったと話されました。

参加者からの学校での取り組みにいての質問に対しては、学校でのカフェを定期的に開催していきたいというのと、
自らの障がいを受容できる場づくり、労働条件のセミナーをして雇用契約を
自分たちで判断する機会を与えることに取組まれていると答えられていました。

 

【参考URL】

ギフティッド
https://h-navi.jp/column/article/667#headline_12859
チャレンジド
https://www.prop.or.jp/about/challenged.html

 

●一般社団法人京都映画芸術文化研究所の太田さん
お宝バンクNo.234:昭和31年~平成6年頃京都市が制作した「京都ニュース」フィルムの保存・活用プロジェクト

太田さんは、上記研究所とおもちゃ映画ミュージアムを2015年に立ち上げられました。
これまで映画を保存するという意識が低かったこともあり、
日本の古い映画や映像は、ほとんど残っていない。そんな状況の中で、
映画フィルムの復元や保存、若手映画人への技術伝承や人材育成などに取り組まれてきました。

取り組みを進める中で、
京都市歴史資料館の倉庫に450本以上の「京都ニュース」の
35mフィルム原版が残されていることがわかり、この貴重なフィルムを
保存、活用していきたいという思いでお宝バンクに登録されました。
「京都ニュース」は京都市の市政ニュースとして作成された映像で、
1956年から1994年まで、京都市内の映画館で上映前に放映されていました。

太田さんらが保存状態の調査に入ったところ、
450本のうち43本程度はすでに劣化が進んでいることがわかりました。
価値のある映像である一方で、深川さんからの費用の質問に対しては
外注でデジタル化するだけでも、1本最低10万かかり、
240本残すとするとそれなりの値段になるとのことです。
また、それぞれの状態が異なるため、状態の見極めをする必要もあるそうです。

お金を出してまで残す価値があるのか?そういった声を受けることもあると言います。
文化財を残す意味があるのか?産業や生活を優先するのか、いつも問われることです。

「京都ニュース」に関わらず、日本中の色々な施設で映像は残されてはいますが、
保存状況が悪く劣化していっているそうです。「京都ニュース」の保存への取り組みを通じて、
映像を次の時代に残す一つの事例になればと話されました。

 

まずは多くの人に知ってもらう。

市政に関する情報のみならず、文化や芸術、当時の風景までが記録されたフィルムですが、
映像の存在はまだまだ市民には知られていないようです。
太田さんがおこなった「京都ニュース」に関するアンケートでは、
回答者の大半が「知らない」という結果だったそうですが、
祭事や市民生活、産業、福祉、教育、観光、景観など、
個別に見られるなら観たいという要望も多いようです。

市民の目に触れる機会として、
これまでにも京都国際映画祭や、祇園祭の時に歩行者天国にスクリーンを
張って上映する祇園天幕映画祭で「京都ニュース」を上映し、紹介されてきました。

 

市民への認知を広げられる中で、
医師の方から出された認知機能の改善に回想法として活用する案や、
ヒストリーものや再現ドラマへの活用、同アンケートで文化芸術の関心が高いことから、
映画祭での上映やWEBなど様々な活用法が考えられています。

 

◆深川さんのコメント

フィルムは財産だが、それ以上に探し出してみんなが見られるようにしたプロセスが財産だと感じた。
中京区は90周年を迎えるので、区のイベントとして活用できるのではないか?
単なるノスタルジーではなく、文化芸術を継承することにも役立つと思う。

 

●西喜商店の近藤さん
お宝バンクNo248:廃棄野菜をおいしく使い切る〜京都のフードロス対策を考える〜

近藤さんは七条千本にある八百屋「西喜商店」の4代目。2015年から父親の後を継ぎ八百屋業を始められました。
八百屋では、京都の中央市場や直接契約している農家さんから野菜を仕入れ、
飲食店への卸と自身のお店での販売をされています。

中央市場と近い位置で仕事をしていることもあり、
自店での売れ残り以外にも市場で買い手がいなかった野菜や
スーパーで並べられずに戻ってきた野菜など、
流通の中で出てきた売れ残った野菜が近藤さんの所に回ってくるそうです。
近藤さんの所で売れる量にも限界があるので捨てざるを得えず、
もったいないと感じる中で伴走型支援プロジェクトに参加されました。

 

 

フードロス問題とコミュニティ食堂

近藤さんは伴走型支援プロジェクトが始まる前から、
学生が主催している子ども食堂を支援されていました。
プロジェクトでも当初は子ども食堂やコミュニティ食堂とのつながりを増やしたいと考えており、
新たなコミュニティ食堂とのつながりも生まれました。

一方で、コミュニティ食堂は大量の料理を低価格で提供するため、
運営するだけでも大変という状況があり、捨てられる特定の野菜を大量に取り入れた料理を
継続的に作るには難しい面があることもわかりました。
料理内容と食材の内容がかみ合わない場合もあり、
フードロスとコミュニティ食堂を結びつけることの難しい面を感じられたそうです。

課題を抱える中、プロジェクトの中間報告会で
「もうちょっと楽しい方向に切り替えましょうよ!」との声から楽しい方向に切り替えてくことになりました。

 

小さくても、良い循環を生み出していきたい。

タイミングが合い、東山にある佃煮屋、津乃吉の吉田さんと一緒に企画された「さらえるキッチン」は、
西喜商店で買い手のつかなかった野菜、津乃吉で佃煮を作るときに出来る煮汁や売れ残りの商品、
参加者の家で余っているものを使って、楽しく料理を食べるイベント。
第1回目が2月4日(日)に開催されました。

シェフは「VEGESUSHI」のユニットを組んでいる料理上手な友人、ナカガワケイタさん。
当日は市場であまった冬瓜と水菜を中心に売れ残り食材を使い、
あまりものとは思えない料理の数々が振る舞われました。
フードロスに関心のある人も多く集まり、参加者同士の会話も盛り上がりました。

 

4団体の中で唯一の営利事業だと話す近藤さん。
社会的な活動の場で営利事業の八百屋ならではの悩みもあると言います。
本当はいい野菜をそれなりの値段で売りたい。安売りしすぎると農家の首を絞めることになる。

それが分かっているからこそ、基本的には正規の価格で買ってもらい、
本当に経済的に困っている人に届けられる仕組みにしていきたいと話されました。

「さらえるキッチン」には嵐山でこども食堂をされる方もいらっしゃり、近藤さんの考えに共感。
フードロスとコミュニティ食堂を上手くかみ合わせる仕組みを模索されていくようです。
根本的な問題を解決することは出来ないかもしれないけれど、
フードロスの認識を持つ人が少しでも増えたるような、
小さな良い循環を生み出していければと話されました。

 

◆深川さんのコメント

社会課題の解決の最たる事例だと思った。子ども食堂、コミュニティ食堂への提供だけでなく、
自分が主体者になりながらつくった場も生まれ、柔軟性と適応性を活かしながら様々な切り口で連携していけるのが良い。

今回の経験から課題を解決するのではなく、
気づきや学びを得ていくことでライフスタイルを変容させていくことに変ったのは良いと思う。

 

休憩を挟んで、後半は4つのグループに分かれて、各団体の活動のブラシュアップタイムとなりました。

私は(一社)京都映画芸術文化研究所の太田さんのグループにはいりました。

海外との比較や保存場所についての話、同じグループに古文書の保存に取り組まれる方もおり、
京都ニュースに限らず、古文書や個人的に撮りためてきた映像、祖母の着物など、
古いものを残すにはどうすればよいかと話が広がっていきました。

 

グループワークが終わり、話し合われた内容が共有されました。

 

  • 北川さん

生きづらさってなんだろう?家族の在り方ってどうなるんだろう?ということが話し合われ、
シェアハウスで好きなように話すのがいいのかな?気の合う人ばっかりで集まってればいいのか?
地域にも居場所は必要だよね!といった居場所の話が色々でました。

 

  • 太田さん

文献、資料などのアーカイブなど共通した課題や問題があり、
映像関係だけでない分野の方と連携をしていくことが必要といった話になりました。

 

  • 近藤さん

根本的な解決は難しいが、食べる側の意識が変わることが一番手っ取り早い。
冷蔵庫を空っぽにしてから買うとか、スーパーで賞味期限が近いものから買うとか、
少し傷んでいる食材を買うとか。という意見が心に刺さりました。

 

  • 柳澤さん

発信していくことによって、自分もこういうことやってますと言う声や、
お母さんの立場からすると障害をなかなか受け入れられないという率直な声があり、
すごく大事だなと気づかされた。一歩一歩発表、検証、巻き込んでいくことが大事かなと思いました。

 

◆深川さんからのコメント

今回は資源という言葉がキーワードな気がしている。外部の資源と一緒にやると活動が活発化する。
それに伴って、移すことのコストや均一にするコストはどうするのか?
移し方、シェアの方法を考えていくことが必要だと思った。

 

 

【参加者の感想】

・声を上げる事で自分も周りも変わるし、前向きに考えてみる事で進む道ができるんだという事を感じました。

・居場所づくりの必要性を皆が感じていることを実感しました。

・まだまだ知らない問題と、win-winの関係を築く難しさを感じました。

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