【2018年度 活動進化プログラム】公開講座レポート #01

レポート2018年09月04日

#01「協創が促進していくチームが生まれるためのビジョンメイキングとは?」

8/19(日)、“みんなごと“のまちづくり推進事業活動進化プログラム公開講座、第1回目「協創が促進していくチームが生まれるためのビジョンメイキングとは?」を開催しました。

“みんなごと”のまちづくり推進事業は、京都がもっとよくなる、もっと住みやすくなる提案を、市民から募集し、行政と民間が一体となって実現を目指す協働事業。全5回の公開講座では、まちづくり・お宝バンク に提案をされている方、またはこれから提案しようと考えている市民に向けて、企画、広報、資金調達の手法の講座、実践者とのトークがおこなわれます。
(※みんなでつくる京都 まちづくり・お宝バンク)

 

第1回目のゲストには(株)ミミクリデザインの安斎さんと東南さん。大好評だった昨年に引き続き、参加者募集開始後すぐに満席となった今回も部屋に収まりきらない程の方が参加され、熱気で溢れていました。

昨年の講座では専門のワークショップや問いがテーマでしたが、今回の「ビジョンメイキング」は、安斎さん自身にとっても手探り状態だと言います。それでも年間60以上のプロジェクトを動かす中で行ってきたビジョンづくりや、ミミクリデザイン自身のビジョンメイキングについて話されました。

 

ミミクリデザインのビジョンは?

 

(株)ミミクリデザインは2017年創業、約20名のメンバーと10名の外部パートナーで構成され、事業開発、組織開発、人材育成、地域活性化などの課題解決と価値創造のプロジェクトをファシリテートする事業(BtoB)のほか、現場のファシリテーターの育成支援(BtoC)に取り組まれています。

昔から何かを何かに見立てて遊ぶことが好きだったという安斎さん。そういったものを体現するワークショップに惹かれていったといいます。10年前に実施し、今でも強く印象に残っているというMimic Comicワークショップは、漫画の登場人物になりきって、週刊誌1話分程の実写漫画を作るワークショップ。好きなジャンルごとのグループに分かれ、架空のタイトルやキャラを設定しながら撮影します。漫画特有の表現を身体で再現する中で、楽しみながらも普段は無自覚に受け取っていた情報への気づきが生まれます。

安斎さんはこういった、何かを別の角度から捉えなおすことを今でも大事にしており、そういった視点からの課題解決を目指していると話されました。社名にもなっている「ミミクリ」とは文化人類学者のロジェ・カイヨワが人間の遊びを4つに分類したうち、何かを何かに見立てる遊びを「ミミクリ」としているところからもヒントを得たそうです。

 

ある時、メンバーの一人から「ミミクリデザインのビジョンってなんなんですか?何がやりたいのか全くわからないです。。」と言われた話を出し、彼も彼なりに悩んでいて、出てきた問いだったと振り返りますが、聞かれた時は思わず「そんなものねぇ!」と答えたくなったと言います。

メンバーが増えるにつれて、メンバー間でのビジョンの共有が難しくなるのはどの組織でも起こりえる課題。安斎さんはこういったメンバーの声から、自分達が課題解決へのプロセスにこだわりを持っていることを再度確認することになったとのことです。

その後、プロセスへのこだわりを明確にするためのビジョンメイキングワークショップをメンバーに向けて開催し、安斎さんがプレゼンする「こだわり1.0」をメンバー全員が考え直す半トップダウン・半ボトムアップ方式で行われました。また、ビジョンメイキング合宿も実施されたそうですが、まだしっくりくるビジョンは見えておらず、現状では「我々のビジョンは何なのか?」という問いとメンバーの持つファシリテーション力によって強固につながっていると話されました。

 

最初の問いを投げかけたメンバーは今ではミミクリデザインが運営し、大人気となっているWORKSHOP DESIGN ACADEMIA(ワークショップデザインやファシリテーションについて体系的かつ継続的に学べるオンラインプログラム)のリーダーとなっているそうです。

 

ビジョンは視覚的なもの?

 

問いが与えられた時、つい辞書を引いてみたくなるという安斎さん。今回も「協創が促進していくチームが生まれるためのビジョンメイキングとは?」というテーマに対し、ビジョンという言葉について辞書で調べてみたそうです。

・将来のあるべき姿を描いたもの。見通し。構想。未来図。未来像。

・視覚。視力。視野。

・幻想。幻影。まぼろし。

・見えるもの。光景。ありさま

調べたところ、どうやらまだ現実にはなっていないけれど、視覚的な映像や光景として「見える」ものらしいということがわかりました。ビジョンは視覚的なものという仮説のもと、公開講座の参加者に「今、映像で見えている未来の姿、こんな風になったらいいなぁと映像で見えているものはありますか?」と問いかけました。

参加者の方々には、近くにいる人とグループとなって話し合ってもらいました。共有の時間では自分のレトロな自社ビルを持っているビジョンや自身の働く姿に関するビジョンが話されました。

 

みんなの中にも“久美子”がいた。

事例の1つとして紹介された三浦半島の観光プランを考えるプロジェクトは、京浜急行電鉄から沿線である三浦半島の魅力を伝えたいとして依頼されたのがきっかけでした。

プロジェクトの課題をとらえ直す中でターゲットが曖昧なことが判明し、誰に三浦半島の魅力を伝えたいのかを解きほぐすことから始まりました。そこで、三浦半島に合う架空の人物像となるペルソナをプロジェクトメンバーでつくりあげ、そのペルソナにとって魅力的な経験を映像として見えるものにしていきました。

 

 

33歳の女性で1人暮らし、都会の人間関係に少し悩みを抱えている”久美子”は、その三浦半島のプロジェクトの中で生まれたペルソナのうちの1人です。

複数のペルソナの中で特に”久美子”はプロジェクトを大きく進めていく存在になっていいったという安斎さん。なぜ”久美子”だったのかについては論理的な説明はできないが、メンバー自身の中に、どこか共感できる部分があったのではないかと振り返ります。プロジェクトメンバーは「久美子が体験する三浦半島」という共通の映像を眺めることによりビジョンを共有していきました。

 

後半はA4の紙に今回の講座のテーマに対する参加者自身の問いを掲げ、似ている人でグループを作ります。興味が近い人達での話し合いは一層の盛り上がりを見せていました。

 

 

「チームメンバーでビジョンを統一する必要はあるか?」「ふわっとしたビジョンでよいのでは?」「誰がどんなタイミングでビジョンをつくる??」「あいまいなビジョンが面白い??」「ビジョンの策定プロセスも一緒にするのがよいのでは?」などなどの問いを中心に話し合いが盛り上がり、時間があっという間に過ぎていきました。

安斎さんと東南さんが出したビジョンに関する問いと仮説、その考えから新たに会場で生まれる問いの連鎖が続いていく場となっていました。次回は、9/27(木)、中西 須瑞化さんをゲストに迎え「物語を通じ想いを伝え、共感を力にかえる情報発信とは?」をテーマに開催します!

今回のグラフィックファシリテーションは鈴木さよさん。時間が経った後からでも思い出せるような、とってもわかりやすくまとめて下さいました!

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